冬の帰り道
『冬の帰り道』
冬の帰り道、彼女の右手は僕の左手をギュッと強く握りしめた。
冬の帰り道、凍えそうな彼女の右手を僕の左のポケットに入れて、暖めた。
冬の帰り道、二人の歩幅が少しずつゆっくりと、そして小さくなっていくのはこの幸せすぎる時間がいつまでも続いて欲しいという説なる願いからであったことは、言葉にしなくても通じ合っていた。
冬の帰り道、雪がヒラヒラと降り出してからも、温かいぬくもりに浸っている方が、暖かいと感じてしまう瞬間がたまらなく嬉しくて全てのことを忘れそうになるのを防ぐのに必死だった。
冬の帰り道、彼女の右手が離れていくのを短く感じた。
冬の帰り道、僕の左手に残る彼女の右手のぬくもりに、少し汗ばんでいた湿気がたまらなく僕の心のスッポリと大きな穴に吸い込まれるのを、無意識に感じていた。
冬の帰り道、ヒラヒラと降り出した雪が寒さの頂点に行き着いたことを、僕の左手の凍える感覚が全身を包んでいくのを静かに感じていた。
冬の帰り道、出会いと別れが交差するその瞬間に、心の動きが全く正反対に動いていくのを感じるまで、少しの時間もかからなかった。
今日はこの辺で。
なんとなく書きたくなって書いてしまいました。えへへ
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